ACCI 2021

<ACCI Gusto 2021 片岡 護シェフ デモンストレーション>
食材の旨味を引き出す火入れやソース使いなど
イタリア料理独特の調理法を伝授

ベーコンや野菜の旨味をじっくり引き出して作るパスタと、トマトの旨味をダイレクトに表現したパスタ。シンプルに見える2種の料理ですが、その調理工程にはイタリア料理ならではの技術がそこかしこに見られます。おいしく学べるデモンストレーションで参加者たちを楽しませてくれました。

ACCI 2021
「菜園風スパゲッティ オルトラーナ ラルド添え」。仕上げにラルド(豚の背脂の加工品)のスライスをのせるのがポイント。ラルドのほどよい塩味が野菜の旨味を引き立てる。

片岡 護さん
20歳で渡伊し、ミラノで5年ほど腕を磨く。1983年、東京・西麻布に「リストランテ アルポルト」を開いて以来、テレビや雑誌でも活躍を続ける。2015年には現代の名工に選ばれ、21年、黄綬褒章受章。

「僕のデモンストレーションはオーソドックスに行きますね」と、いつもの穏やかな笑顔で話し始めた片岡シェフ。今回シェフが紹介するのは家庭でもできるパスタ料理ですが、健康ブームに配慮してたっぷりの野菜を使用。さらにイタリア料理でよく用いる加熱法、ソース作りやそのアレンジなど、大切なポイントが詰まっています。

具材にはベーコンやキノコの他、ナス、タマネギ、ズッキーニ、ピーマン、赤・黄パプリカなど、たっぷりの野菜を用意。

「中国料理と比較するとわかりやすいと思うのですが、イタリア料理では中華のように強火で一気に加熱するようなことはほとんどありません。どちらかというと弱火でじっくり。象徴的なのがパスタ料理のスタートで、オリーブオイルやニンニク、赤唐辛子などを弱火にかけてゆっくりニンニクの香りを出していきますね」
今回も同様に開始し、タマネギ、ズッキーニ、ピーマンやパプリカなどの野菜を入れてからも火は弱火のままです。
「全体に火が通って素材の旨味が出るまで、30分ほど加熱してください。家庭ではここまで時間をかけることはしないかもしれませんが、こうすることでグンとプロの味に近くなります。
このようにして作ったソースに、ゆで上げたパスタをからめていくわけですが、僕の場合、麺をゆでる際の塩分量は約1%と決めています。これはシェフによって、1~1.5%と幅があり、なかには3%にして、そのあと湯で洗うというシェフもいます。3%にするとたしかに麺が締まるので、あとから湯で洗うという手間はかかりますが、それもまたアリですね。麺の太さやソースの濃さなどを考えながら、自分の好みに合った塩分濃度やゆで時間を研究するのもバスタ料理の面白さのひとつです」

野菜やキノコがしんなりとしたところで、白ワインやトマトソースなどを加えてさらに煮込んでいく。ソースが完成するまでの時間は30分が目安。

ゆで上がった麺にソースを馴染ませ、塩、コショウ、パルミジャーノチーズ、オリーブオイルなどで味をととのえたあと、ラルドの薄切りをのせて「菜園風スパゲッティ オルトラーナ ラルド添え」は完成です。

「ラルドが加わると一層コクが増しておいしいね」と「インフィニート ヒロ」の山田宏巳シェフ。
「さすがの味わい」と参加者にも大好評だった。

さらに片岡シェフは、「残念ながら体調を崩して参加できなかった落合務シェフに代わって、もうひと皿紹介しましょう」と、落合シェフ愛用の「オスミックトマト」(株式会社OSMIC)をふんだんに使ったトマトパスタもふるまってくれました。

落合シェフが推薦する「オスミックトマト」のフレッシュ感を活かしたパスタ。トマトの酸味と甘味のバランスが絶妙で、ジェノベーゼソースの風味と彩りが食欲をそそる。

「このパスタに用いたジェノベーゼソースには松の実とクルミがたくさん入っているので、味全体に深みを添えますが、麺とからめる際は余熱を利用して絶対に加熱はしないでくださいね。加熱するとくどさが出て、せっかくの味わいが台無しになってしまうんです」
パスタをよりおいしく仕上げるために盛り込まれた、わかりやすくてためになるアドバイスの数々。ベテランシェフの的確なデモンストレーションに多くの参加者が納得の拍手を送りました。

 菜園風スパゲッティ オルトラーナ ラルド添え

材料

パスタ(スパゲッティーニ) ・・・ 160g
ベーコン(ブロック) ・・・ 50g
ナス ・・・ 1本
タマネギ ・・・ 1/4個
ズッキーニ ・・・ 1/2本
ピーマン ・・・ 1個
赤・黄パプリカ ・・・ 各1/2個
マッシュルーム ・・・ 2個
シイタケ ・・・ 2枚
オリーブオイル ・・・ 大さじ1+適量
ニンニク(みじん切り) ・・・ 1片分
赤唐辛子 ・・・ 1本
バジリコの葉 ・・・ 2枚
オレガノ ・・・ 少々
トマトソース ・・・ 1カップ
塩・黒コショウ ・・・ 適量
パルミジャーノチーズ ・・・ 適量
パセリ(みじん切り) ・・・ 適量
ラルド(薄切り) ・・・ 4~6枚


作り方

1. ベーコンは8mm角で5mmの厚さに切る。その他の野菜やキノコも適当な大きさに切っておく。ナスは1cm角に切って180℃の油で素揚げする。
2. フライパンにオリーブオイル大さじ1とニンニク、赤唐辛子を入れて弱火で炒め、香りが立ったらベーコンを加えて旨味を出すようによく炒める。
3. 2 にタマネギを加えて軽く炒め、ズッキーニ、ピーマン、赤・黄パプリカ、マッシュルーム、シイタケを加えて塩・黒コショウをふり15分ほど炒める。
4. 3 に白ワイン(分量外)を回し入れ、バジリコの葉を手でちぎって加え、オレガノをふり、トマトソースと素揚げしたナスを加えて少々煮込む。
5. アルデンテにゆで上げたパスタを 4 に加え、塩・黒コショウ、パルミジャーノチーズ、オリーブオイルで味をととのえ、よく混ぜ合わせる。
6. 5 を皿に盛り付け、ラルドの薄切りをのせ、パルミジャーノチーズとパセリをふってサービスする。